
✓重陽の節句ならではの食べ物は?
✓どのように過ごすの?
このような疑問を解消します。
みなさんは「重陽の節句」を存知でしょうか?現在ではあまり聞き慣れない行事だと思われます。
別名「菊の節句」とも呼ばれており、桃の節句、端午の節句と並ぶ五節句のひとつ。他の節句より馴染みが薄いかもしれませんが、実は昔は最も重要な節句とされていたのです。
いったい重陽の節句とはどのような行事なのでしょうか?
この記事では、重陽の節句の意味や由来、行事食や楽しみ方までご紹介します。
このページの目次
重陽の節句はいつ?
POINT
五節句のひとつ「重陽の節句」は毎年9月9日。
その歴史は古く、元々は旧暦の9月9日にお祝いされていた年中行事。新暦では10月中旬から下旬頃にあたるのですが、現在の暦でも重陽の節句は「9月9日」に行われています。
ただし、中には新暦に換算した日に行われることもあります。重陽の節句は、菊や栗、ナスといった秋の収穫物が使われる行事であるため、新暦の9月9日では収穫時期が若干ズレてしまうからです。
重陽の節句が時代と共に影が薄くなっていった原因は、この旧暦と新暦による違いとも言われています。
重陽の節句とは【意味と由来】
重陽の節句は菊が象徴的な行事であることから、別名「菊の節句」とも呼ばれています。
邪気を祓う力が宿り、寿命が延びるとされている菊を使い、不老長寿や繁栄を願う行事としてお祝いされてきました。
中国から伝わってきた「五節句」の最後を締めくくる節句。
五節句とは
季節の変わり目に生まれやすい邪気や厄を払い、無病息災を願う五つの神事。
- 人日(七草がゆ)・・・1月7日
- 上巳(桃の節句)・・・3月3日
- 端午(菖蒲の節句)・・・5月5日
- 七夕(星祭)・・・7月7日
- 重陽(菊の節句)・・・9月9日
昔は最も盛んにお祝いされていた行事だったのですが、現在では五節句の中で最も馴染みの薄い節句となっています。
旧暦9月9日は現在の10月中旬頃でちょうど”菊”が見頃を迎える時期。ところが、現在の9月9日はまだ秋らしさが薄く、菊の盛んな時期とも若干ズレがあります。
旧暦から新暦に変わっても変わらず9月9日にお祝いされているせいで、他の節句よりも季節感が合わなくなり、次第に廃れてしまうことに・・・。
奇数は縁起が良い!9月9日は最もめでたい日だった!
起源は他の節句と同じく中国から伝わってきた五節句。
1月7日の人日(元は1月1日)、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、そして9月9日の重陽を指し、この日は全て同じ「奇数」が連なっています。
古代中国の考えでは——
- 偶数は縁起の悪い”陰数”
- 奇数は縁起の良い”陽数”
中でも1から10の間で一番大きい9は最高に縁起の良い数字であり、9が2つ重なる9月9日を「重陽(陽数が重なる)」と呼び、最も縁起の良い日として盛大にお祝いされていたのです。
ただ、奇数が連なるめでたい日である反面、災いに転じやすいとも考えられていたことから、お祝いだけでなく厄払いの儀式も執り行なわれていました。
重陽の節句といえば「菊」!
重陽の節句は別名「菊の節句」とも呼ばれるほど、菊はこの日に欠かせない植物。
古来より中国では菊は薬草としても用いられ、長寿をもたらす花として大切にされてきました。菊のおかげで少年のまま700年生きた「菊慈童(きくじどう)」という伝説があるほど。
そこで、中国では9月9日に菊を浮かべた菊酒を飲んで邪気を祓い、長寿を願う風習が生まれたといわれています。
平安時代の日本に重陽の節句の風習が上陸
この風習が海を渡って日本に伝わったのは平安時代。
平安貴族の宮中行事「重陽の節会(せちえ)」となり、日本に伝来してきたばかりの珍しい菊を観賞しながら、菊酒を飲む宴が行われ、厄払いや長寿祈願が行われるようになりました。
また、宮中の女官の間では、前夜に菊の花を綿で覆い、菊の香りと朝露を含ませた綿で体を拭く「菊の着綿」という風習が行われるようになります。長寿になるとか若返ると信じられていたようです。
そして、江戸時代には式日(祝日)とされていた五節句となり、庶民の間でも盛大に祝われるようになるのですが。
先程も述べた通り、明治以降旧暦から新暦に変わったことで菊が旬の時期とズレてしまったりと、季節感の違いから次第に廃れていきました。
重陽の節句で食べる行事食
重陽の節句は秋の収穫祭とも結びつきのある行事です。そのため、重陽の節句の祝い膳には秋の味覚がよく食べられてきました。
栗ごはん
重陽の節句はちょうど栗の収穫期と重なっていたことから、江戸時代の頃に栗ごはんを食べる風習が生れました。
そのため別名で菊の節句と呼ばれる以外にも、特に庶民のあいだで「栗の節句」とも呼ばれていたようです。
秋茄子
秋ナスを使った料理も定番メニューです。「おくんち(9日)に茄子を食べると中風にならない」という言い伝えもあり、焼き茄子や茄子の煮びたしなど、茄子を使った料理を食べるようになりました。
中風とは
現在では脳血管障害の後遺症のこと。半身不随、片麻痺、
食用菊
昔から菊は食用としても親しまれており、現在でも食用に栽培された食用菊を、おひたしやお吸い物にして食べられています。
観賞用の菊を食用に品種改良したもので、苦味が少なくほのかな甘みを感じられるのが特徴。
花びらのみを用いるお吸い物、おひたし、和え物、天ぷらなどに使われているのは主に大輪種。刺身のつまに使われているのは黄色い小輪種です。
重陽の節句の楽しみ方
現在では馴染みが薄い節句となってしまっているため、何をする行事なのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。最後に重陽の節句の楽しみ方をご紹介します。
菊酒
菊酒とはその名の通り、菊の花びらを浸したお酒のこと。杯に菊の花びらを浮かべて、薬効と爽やかな香りと共にお酒を楽しんでいました。古くは平安時代の頃から行われてきた楽しみ方です。
本来は漬け込んだ菊の花びらを使いますが、食用菊の花びらを浮かべるだけでも雅な雰囲気を味わえます。
被せ綿/着せ綿(きせわた)
「被せ綿」もしくは「着せ綿」とは、宮中の女官たちが好んで行っていた日本独自の風習。
前日の夜のうちに菊に綿を被せて、翌朝の朝露や菊の香りがしみ込んだ綿で体を清めるというもの。被せ綿で体を清めると長生きできると信じられていました。
正式には「赤い菊には白い綿」「白い菊には黄色い綿」「黄色い菊には赤い綿」を被せるようです。
菊湯、菊枕
重陽の節句の象徴といえば菊。そんな菊を使った「菊湯」や「菊枕」もおすすめです。
菊湯とは、その名の通り菊を湯船に浮かべたお風呂のことで、今でいうところのハーブバスのようなもの。菊枕とは、乾燥させた菊の花を詰めた枕のこと。
日々の疲れを癒すのにピッタリです。菊を使った雅なアロマテラピーを楽しむのも良いでしょう。
今年の9月9日は重陽の節句を意識して過ごしてみよう
重陽の節句は端午の節句と並ぶ五節句のひとつでありながら、いまの時代ではその存在すら知らない人も増えており、一般的には馴染みの薄い行事となっています。
しかし、本来は最も重要とされていた節句。奇数は縁起が良い陽数であり、その奇数が並ぶ日をお祝いしたのが五節句。なかでも、陽数の最大値である「9」が並ぶこの日は非常におめでたい日なのです。
菊の節句とも呼ばれる通り、行事食、お風呂、枕など、様々な形で菊を取り入れているのも特徴。長寿の象徴であり、邪気を祓うとされる菊のパワーにあやかってみてはいかがでしょうか。
菊以外では秋の味覚であるナスや栗もおすすめです。あまり親しみの無かった方も、今年は菊や秋の食材を取り入れて重陽の節句をお祝いしてみてください。