
✓食べる順番は?箸の使い方は?お椀の蓋はどうしよう・・・
✓改まった席で和食をいただく際の基本マナーと食べ方を知りたい
こんな悩みや疑問を解消します。
大人になると、冠婚葬祭や仕事での付き合いなど、改まった席で”和食”をいただく機会が増えますよね。
和食には馴染んでいても、改まった席で食べるとなると、心配になるのが食事マナーや作法ではないでしょうか?
知らないと恥をかいてしまいますし、周りの人たちにも迷惑を掛けてしまうかもしれません。
そこで今回は、日本人なら知っておきたい和食(日本料理)の正しいマナー・食べ方を分かりやすく解説します。
このページの目次
和食・日本料理の種類
和食のマナーや作法を解説する前に、事前知識として和食・日本料理にはどんな種類があるのかも知っておきましょう。
「和食」と「日本料理」は同じ意味で使われることが多いのですが、厳密にいうと――
- 和食とは・・・家庭料理を含む日本人が築き上げてきた伝統的食文化の総称
- 日本料理とは・・・料理店で提供される高度な技術を要するおもてなし料理
となります。
日本料理の代表的な形式は以下の3つ。
POINT
- 本膳料理・・・最も本格的な和食で、日本料理の原型
- 懐石料理・・・茶の湯の席でお茶の前に振舞われる少量の食事
- 会席料理・・・結婚式や宴会に提供される最もポピュラーなおもてなし料理
他には、主に寺院でいただく魚やお肉を一切使わない「精進料理」、お正月の定番である「御節料理」、お寿司・天ぷら・蕎麦といった「専門料理」など、細かくあげると形式や種類は多種多様です。
ここでは、和食の基本といわれる「一汁三菜」をメニューとする、伝統的な日本料理・和食におけるマナーを解説します。
懐石料理の基礎知識について、「懐石料理とはどんな食事?会席料理とは違うの?【献立・順序・マナーなど基礎知識を解説】」の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
和食(日本料理)の基本的なテーブルマナー
和食の配膳・並べ方
伝統的な和食の構成は「一汁三菜」を基本としており、配膳にもルールがあります。
一汁三菜とは
主食の「ご飯」と「汁物」に、焼き物や刺身などの「主菜」、煮物や炒め物などの「副菜」、漬物や和え物などの「副々菜」を加えたバランスの良い献立
和食(一汁三菜)における正しい配膳位置は以下のようになります。
和食の配膳位置
- ご飯:手前の左側
- 汁物:手前の右側
- 主菜:奥の右側
- 副菜:奥の左側
- 副々菜:奥の中央
ご飯を左に配置するのは「左優位」の考え方から
ご飯を左側に置く”と定められたのは室町時代の本膳料理からです。
この配膳作法は神道の「左優位(位の高いものを左に置く)」という考え方を由来としており、古くから日本人にとって貴重だったご飯を左に置いたとされています。
ちなみに、ごはんと汁物を左右逆に置くと”仏壇へのお供え”になってしまうので注意してください。
配膳位置は右利きが基準
もう一つの理由は、右利きの人の方が圧倒的が多いことから、配膳も右利きの人が食べやすいように配置されています。
和食の正しい食べ方は「汁物⇨ご飯、主菜⇨ご飯・・・」というようにご飯を主体としており、左手前にごはんを置いた方が食べやすいのです。そのため、上記のような配膳ルールが定められました。
なお、左利きの人に配膳する場合は、料理の位置は変えません。箸の向きだけを反対にして置きます。
和食を食べる順番
和食を食べる順番についてですが、一品ずつ出て来るコース形式の場合は、出てる来る順番通りに食べればいいです。
しかし、宴会の席のように全ての料理を一度に配膳する場合もあります。
まず最初に「汁物」、次に「ご飯」、そして「おかず」という順番。汁物からスタートする理由は、箸の先を濡らしておくことで、ご飯粒が箸にこびりつくのを防げるから。
また、まとめて配膳される場合は、先に食べた方が良い料理は左側や手前に置かれることが多いです。
和食は基本的に「薄味のものから順番に食べていく」のがマナー。最初に味の濃い物を口にすると、繊細な味わいや風味を感じにくくなってしまうからです。おかず(主菜)を後回しにするのはそういった理由。
盛り合わせ物の場合は、一般的には左側に薄味の品が盛り合わせてありますので、器の左側から食べていきましょう。
おしぼりの使い方
基本的に「おしぼりで拭くのは手だけ」。それ以外では使わないのがルールであり、マナーです。
たまに、おしぼりで顔や首を拭く人、またはテーブルの汚れや水滴を拭いてる人を見かけますが、それらの行為はマナー違反とされていますので注意してください。
おしぼりの使い方
右手で取り、左手の上で広げ、右手を拭き、同じ面で左手を拭いて、抜いた部分を内側にして畳んでおきます。
また、口を拭きたい時のために、「懐紙(懐に入れて携帯する二つ折りの和紙)」を持参しておくと便利です。
お箸の正しい持ち方と使い方&NG行為
和食において、箸を正しく使う事は基本のマナーとして大切にされています。そのため、タブーとされている行為は周りに不快感を与えてしまうこともありますので、正しい箸使いをしっかりマスターしておきましょう。
お箸の持ち方と使い方
- 右手で箸の中ほどを持ち、左手で下から支える
- 右手を右側に滑らせて、左手と同じように箸の下へ
- 左右ともに箸の1/3あたりを指先で持ち、左手を外して正しく箸を持つ
左手の方の場合は、箸の向きを変えて、あとは手を逆にして1~3のステップを行いましょう。箸を置くときは、上記と反対の動作をしてください。
次に箸の動かし方は、下の箸は動かさずに、上の箸だけ動かすのが正しい使い方となります。
また、箸は「箸先五分、長くて一寸」が美しい作法とされおり、箸先を汚すのは3~4cm程度までに抑えて使用するのがマナー。
割り箸の場合は、あまり音を立てずに、木屑を料理に落とさないように膝の上あたりで割りましょう。箸を横向きにして上下に割ります。
タブーな箸の使い方
箸の使い方によっては、周りの人に不快な思いをさせてしまうことがあります。そういった箸の使い方は「嫌い箸」や「忌み箸」と言われており、マナー違反とされているので注意してください。
中にはそのタブー行為が癖になってる方もいます。下記にNGな箸の使い方をまとめておきますので、身に覚えがないかチェックしておきましょう
NGな箸の使い方の一例
返し箸・・・箸の持ち手の部分で料理をつかむこと
迷い箸・・・どれを食べようか迷って箸をあちこち動かすこと
刺し箸・・・フォークのように箸を料理に突き刺すこと
寄せ箸・・・箸を使って器を引き寄せること
ねぶり箸・・・箸先を口の中で舐めること
合わせ箸・・・箸から箸へ料理を受け渡すこと
たて箸・・・ご飯に箸を突き差して立こと
にぎり箸・・・箸を正しく持たず握りしめて持つこと
空箸・・・一度箸をつけた料理を食べずに戻すこと
涙箸・・・料理の汁をぼたぼた落としながら口に移すこと
咥え箸・・・箸をくわえたままでいること
探り箸・・・盛ってある料理を自分の好きなものを探るように混ぜること
指し箸・・・箸を使って人や物を指すこと
手で持ち上げて良い器とダメな器
和食では食器の扱い方にも正しい所作があり、「手で持ち上げて食べる器」と「持ち上げてはいけない器」があるんです。
目安としては、手のひらより小さい器は左手で持ち上げていただき、手のひらより大きい器は持ち上げずにいただきます。
逆に小さい器をテーブルの上に置いたまま食べるのはマナー違反。ただ、熱い器に関しては持ち上げなくてもいいです。
■持ち上げる器
茶碗、汁椀、小皿、小鉢、醤油皿、どんぶりなど
■持ち上げない器
数人用の大皿、大きな椀や鉢、魚・焼き魚・天ぷらの皿、大きな麺類の器など
ちなみに、手を受け皿代わりにする方は多いでしょうが、手皿はマナー違反なのでNG。取り皿を利用するか、懐紙を受け皿代わりにするのが正解です。
食べ終えたら
食事を終えたあと、器は元の配膳位置に戻します。空いてる器を重ねると器に傷がつく恐れがあるので、重ねるのはNG。
使い終わった箸は箸置きに。箸置きが無くて箸袋を使用する場合は、箸袋の先端を二つ折りにしてから箸を入れます。
和食の料理別の正しい食べ方とマナー
続いて、料理別の正しい食べ方やマナーについて解説します。
吸い物のいただき方
吸い物は一般的に”すまし汁”や”土瓶蒸し”が提供されます。
まずは目上の方が椀の蓋を取ってから自分の蓋を取ってください。
左手を椀に添え、右手で蓋をつまんで持ち上げ、「の」の字か半月を描くようにゆっくり回しながら開けます。開けた蓋を椀の上で縦にして少し間をおき、蓋の内側についた水滴を落としてから、蓋を裏返して椀が左側なら左奥に、椀が右側なら右奥に置きます。
吸い物は、蓋を開けたらまずは香りを楽しむのがマナー。次に汁を一口いただいて、そのあとに具を口にするという順番。それからは、汁と具を交互に食べるようにしましょう。
汁と一緒に具を食べたり、ズズズと音を立てて飲むことはマナー違反です。
食べ終えたら、蓋は元通り椀にかぶせます。
お刺身のいただき方
お刺身や御造りは向付けとも呼ばれ、味が淡泊であっさりしたものから順に食べていきます。
淡泊な白身魚からいただき、貝類、最後に赤見魚という順番。
多くの場合、手前や左側に味が淡泊なものが盛りつけられているので、手前から奥へ、あるいは左から右へ食べ勧めていくようにしましょう。
醤油はべちゃべちゃにせず少量つけていただきます。
わさびは醤油に溶かさず、箸で少量取って刺し身に直接つけてから醤油でいただくのが正しいマナーです。醤油が垂れないように醤油の小皿を持っていただきます。
お刺身に添えられているツマは、お刺身と一緒に食べても、残しても構いません。
焼き魚のいただき方
焼き魚には尻尾付きと切り身の2種類あります。
食べ方の基本は、左から少しずついただくのがマナー(尻尾付は頭側から尻尾側へ)。魚の皮は残しても構いません。
気を付けたいのは尻尾付き(姿焼き)の焼き魚。
まずは上半分の上の身(背の身)をいただいてから下半分を食べるのですが、このとき魚を裏返してはいけません。
左手で魚の頭を押さえて尻尾を折り、尾から頭に向かってスーっと骨を引き抜き、骨を皿の奥へ置きましょう。食べ終えたら骨は半分に折り、頭と一緒に左奥にまとめておきます。
殻付き・頭付きのエビや貝類の場合は、殻を剥がすときは手を使ってもマナー違反にはなりません。
煮物のいただき方
煮物は「炊き合わせ」とも言われ、ふた付きの鉢に盛って出されますので、吸い物と同じように蓋を取ってください。
小ぶりの器なら手に持ち、大きな器なら置いた状態のままで。
盛り付けを崩さないように、手前の具から一口サイズに切っていただきます。
汁た滴り落ちるようなら、手皿は使わずに懐紙や蓋を受け皿にしてください。残っただしは器に直接口を付けて飲んでも構いません。
揚げ物のいただき方
和食で最もよく出される揚げ物は「天ぷら(衣揚げ)」です。他には唐揚げや素揚げがあります。
天ぷらは刺し身と同様、淡泊なものから手前に、味が濃いものは奥に盛り付けられているのが一般的。
なので、盛り付けを崩さないように、手前から奥へ順に食べ進めていきます。
天つゆに薬味を入れて、つゆが垂れないように器を手に持ち、天ぷらを付けていただいてください。
イカのような箸で切りにくい具材は、歯で噛み切って数口に分けてたべるようにしましょう。このとき、左手や懐紙で口元を隠すようにするとより上品になります。
蒸し物・酢の物のいただき方
蒸し物でよく出されるのは「茶碗蒸し」です。あとはかぶら蒸しや酒蒸しも定番メニュー。
器がかなりアツアツの状態で出てきますので、火傷をしないように、まずはそっと器の温度を確かめましょう。
食べる時は、スプーンを使って手前からすくっていただいてください。なるべく音は立てないように気を付けて。
熱くて器が持てないようでしたら、無理に持ち上げなくても大丈夫です。
酢の物が出てきた場合は、汁気が多いので器を手に持っていただきます。一気に食べるのではなく、何口かに分けてゆっくり上品に食べましょう。
デザート(水菓子)とお茶のいただき方
食後のデザートには、旬のフルーツの盛り合わせ、シャーベット、和菓子などのデザートとお茶が出されます。
フルーツの場合は食べ方に決まりはありませんが、さっぱり・すっぱいものから食べていくと、口の中がさわやかに落ち着きます。果物の種や皮は一か所にまとめ、懐紙で隠しておくと上品です。
抹茶と和菓子のセットの場合は、先に和菓子をいただいてから抹茶を飲むようにしましょう。
和食を楽しむために食事作法とマナーを身に付けよう!
伝統的な和食には、細かい作法やマナーがたくさんあるため、むずかしそうと感じる方は多いことでしょう。
しかし、慣れてない内から全てを完璧にこなそうとすると、せっかくの料理を楽しむことができません。それでは本末転倒ですよね。
そもそも完璧に守れる人はそう多くありませんので、慣れない内は最低限失礼のない程度の作法とマナーを身に付けておけば十分。あとは経験・場数を積み重ねていけば自然に身に付きますので、少しずつ学んでいってください。
マナーは一緒に食事をする人に不快な思いをさせず、一緒に食事を楽しむためにあるもの。そう心得ておくと、難しいマナーもマスターしやすいかもしれませんね。