
✓新嘗祭はどんな行事?
✓神嘗祭と新嘗祭は何が違うの?
こんな疑問を解消します。
毎年実りの秋には「神嘗祭(かんなめさい)」と「新嘗祭(にいなめさい)」という2つの宮中祭祀が行われています。どちらもその年の収穫を感謝する神事です。
2つの神事は共通点が多く、名前も一文字違いとあって間違えそうになると思います。いったいどんな神事で両者にはどんな違いがあるのでしょうか。
この記事では、神嘗祭と新嘗祭の意味と2つの行事の違いを分かりやすくご紹介します。
神嘗祭とは
神嘗祭とは、宮中および伊勢神宮で毎年執り行なわれている五穀豊穣の感謝祭。
その年に収穫された新穀(最初に収穫した稲穂「初穂」)を最初に天照大御神にささげ、御恵みに感謝するお祭り。
読み方は「かんなめさい」。もしくは「かんなめのまつり」「かんにえのまつり」とも読みます。毎年10月17日に執り行われている宮中祭祀です(明治以降までは旧暦9月17日)。
日本神話で天照大御神が天上の高天原(たかまがはら)で初穂を食されたことに由来。
伊勢神宮で最も重要とされている祭儀で、始まったのは今からだいたい1300年前の西暦731年。このタイミングで装束・祭器具を一新することから「神嘗正月」とも呼ばれています。
神嘗祭はどんな神事?
神嘗祭の主な儀式は以下の4つ。
POINT
- 由貴夕大御饌(ゆきのゆうべのおおみけ)
- 由貴朝大御饌(ゆきのあしたのおおみけ)
- 奉幣(ほうへい)の儀
- 御神楽(みかぐら)
由貴夕大御饌と由貴朝大御饌とは、それぞれ神様の夕食と朝食のことで、海川山野の食材30種とお酒を神前にお供えします。
奉幣では天皇陛下から賜った幣帛(へいはく:神前の供物)を勅使が神様に献上。そして、神様を慰めるための舞「御神楽」の奉納で締めくくりとなります。
この時期には天皇陛下から奉られた御初穂の他に、全国各地の農家からも稲束が奉献されているようです。
新嘗祭とは
新嘗祭とは、宮中祭祀の中で最も重要とされる五穀豊穣を祝う収穫祭。
収穫された新穀を神に奉り、その恵みに感謝し、国家安泰、国民の繁栄をお祈りします。
新嘗祭の読み方は「にいなめさい」。または「にいなめのまつり」「しんじょうさい」と読みます。毎年神嘗祭の約1か月後の11月23日に、宮中三殿の神嘉殿(しんかでん)をはじめ、全国各地の神社で執り行なわれている宮中祭祀です。
「新」は新穀(初穂)を、「嘗」は味わうことを意味しています。
古事記によると起源は神代にまで遡りますが(天照大御神が行ったのが初)、実際に人類で初めて行われたのは飛鳥時代の皇極天皇の頃(西暦642~645年)。
ちなみに、天皇陛下が即位して最初に行う新嘗祭を「大嘗祭(だいじょうさい)」と呼びます。
新嘗祭はどんな神事?
天皇陛下が天神地祇(天照大御神をはじめとしたすべての神々)に初穂をお供えし、天皇陛下自らも初穂を召し上がって収穫に感謝する宮中祭祀。主な儀式は3つ。
POINT
- 鎮魂祭
- 新嘗祭賢所・皇霊殿・神殿の儀
- 神嘉殿の儀
新嘗祭の前日に行われる「鎮魂祭」とは、簡単に説明すると天皇の魂の活力を強化する儀式。
当日の「新嘗祭賢所・皇霊殿・神殿の儀」では、神々や天皇の御霊が祀られている宮中三殿において、新嘗祭を執り行う奉告(神、貴人に知らせること)をします。そして、神嘉殿の儀の準備開始です。
その日の夜に行われるのがメインとなる「神嘉殿の儀」。皇祖(天照大御神)をはじめとした神々に新穀を供え、神の恵みに感謝して陛下自らもお供えしたものと同じものを召し上がります。日本神話では天皇は天照大御神の子孫。天皇自らが召し上がることで新たな力を得て、翌年の五穀豊穣を約束される行事なのです。
神嘉殿の儀は「夕の儀」と「朝の儀」の2部構成。どちらも同じ内容の儀式を行います。
新嘗祭と勤労感謝の日との関係は?
新嘗祭が執り行われる11月23日といえば、現在は「勤労感謝の日」として祝日に指定されています。この日は、明治6年から昭和22年(1947年)までは新嘗祭と同名の祝日でした。
しかし、戦後GHQの占領政策の下、名称を勤労感謝の日に改変。一説では、国家神道や天皇陛下の権威を弱体化させたかったアメリカの思惑があったとも言われています。
勤労感謝の日の主旨は「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」。昔で言えば勤労は農業が主だったので、「収穫を祝い、五穀豊穣に感謝する」という新嘗祭の本来の意味とも同じと言えます。
神嘗祭と新嘗祭の違いは?
神嘗祭も新嘗祭も歴史ある祭祀。どちらも時期は秋であり、新穀を神前に供え、五穀豊穣に感謝するという意味も同じ。名前も一字違いでとても似ていますね。
何かと混同されがちではありますが、もちろんこの2つの祭祀は別物。
神嘗祭(かんなめさい)
神嘗祭とは、宮中および伊勢神宮においてその年に収穫した新穀(初穂)を、皇祖である天照大神にお供えして、御恵みに感謝する儀式。
- 天照大御神に新穀を奉納するお祭り
- 五穀豊穣に感謝して、神様にお供えをする
新嘗祭(にいなめさい)
新嘗祭は、天照大御神を始めとした神々に新穀を奉納し、神の恵み(収穫)に感謝すると共に、天皇陛下自らもお供えした五穀を召し上がる儀式。
- 日本神話すべての神々に感謝を伝え、新穀を奉納するお祭り
- 神々にお供えした五穀と同じものを、天皇陛下も食す
神嘗祭は感謝してお供えするのみですが、新嘗祭は陛下が同じものを体内に入れる所作も兼ねているという点が異なります。
神嘗祭と新嘗祭にあやかって収穫に感謝して秋の恵みを味わおう
実りの秋に執り行なわれる2つの重要な宮中祭祀「神嘗祭(かんなめさい)」と「新嘗祭(にいなめさい)」。2つの祭祀は秋の収穫に対する感謝祭の意味合いが強く、本質的には両者に大きな違いはありません。
ただ、もちろん異なる祭祀ではあるのでそれぞれ違う点も確認できます。
新米に限らず野菜や果物など生きた実りが際立つ季節。今年は神嘗祭と新嘗祭を意識して過ごすため、恵みのありがたみを噛みしめ、収穫に感謝しながら秋の実りを味わうのもいいかもしれませんね。